精神療法(カウンセリング)
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精神療法

 当院では、薬物療法だけではなく精神療法(カウンセリング)も重視して行っています。精神療法としては、以下の点がポイントであると考えています。
  • 今現在の問題にしっかりと焦点を当て、具体的で現実的な解決策を模索していくもの
  • 統計学的に行う意味があるということが証明されている=科学的な根拠のあるもの
 このような観点から、認知行動療法(CBT)という治療技法を真っ先に挙げるべきでしょう。CBTは世界的に見れば今や精神療法のメインストリーム(主流)となっていますが、日本では導入がかなり遅れてしまい、最近になってようやく根付きつつあります。私たちとしても、CBTを念頭に置いて根拠のある精神療法を行っていく心積もりでいます。特にエクスポージャー(exposure)と呼ばれる技法は、全ての不安障害に対して有効であることが示されており、当院でも積極的に行っていきます。

 その一方で、治療技法の発展や知見の集積に伴って、CBTは少しずつ変わろうとしています。また、科学的な根拠を重視しつつ今現在に焦点を当て具体的な解決を探っていく技法は、CBTだけではありません。さらに、「今現在に焦点を当てる」や「科学的根拠」ということだけでは納まりきらない側面が、心を扱う領域の中にはどうしても含まれています。これはもしかしたら、今現在の皆さんの問題が、どのような「いきさつ」でもって生じてきたのかという、過去を把握するための理論ということになるのかもしれません。このような理論は、過去やそれに伴う記憶といった「曖昧なもの」を含まざるを得ない以上、少なくともCBTで言われているような科学の対象にはなりにくいという側面がどうしてもでてきてしまいます。

 このような観点から、CBT以外の治療技法や理論について以下にご紹介したいと思います。なお、医師の診察は初診30分、再診10分となりますが、本格的な精神療法をご希望の方は、40分枠もしくは特別枠のカウンセリングをお勧めしております。
費用についての詳細はこちら》

① アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT=「アクト」と読みます)

 これは、第三世代行動療法と呼ばれる比較的新しい治療理論です。第三世代行動療法は他に、境界性パーソナリティ障害を持っている方に有効であるとされる弁証法的行動療法(DBT)があります。よく耳にする認知行動療法(CBT)は第二世代に属すのですが、メインストリームであるCBTに対し、ACTはオルタナティブ(もう一つの選択肢)であると言ってよいでしょう。しかし、両者は多くのものを共有していることも事実です。

 ACTは、不安・イライラといった感情や、それに伴う嫌な考えといったものに対し、今までとは全く異なるアプローチを提供します。つまり、こういったマイナスの感情・思考に対し、多くの人が「今すぐなくしてしまいたい!」「絶対に感じないように気をつけていたい!」と考えるのではないかと思います。そしてこれは治療を提供する側に対しても当てはまります。「不安やイライラした時に、この薬を飲んで下さい」と言って抗不安薬(安定剤)を頓服として処方するという医師は非常に多いですし、CBTにおいても、マイナスの思考を修正するための「認知変容」というものを治療の核として行っています。

 これに対し、ACTでは全く違う考え方でアプローチします。そもそもマイナスの感情・思考をその場で変えるなんてことが可能なのでしょうか。可能だと即答される方は、もちろん本当にそれがうまくいっているのであれば構いません。しかし、ドラッグや安定剤を服用することでそれが達成されているのだとしたら、大問題でしょう。ACTは、多くの人々にとってマイナスの感情・思考を変えるということが非常に困難なことであるというだけでなく、「心の中身を頑張って変えよう」とする努力に膨大な時間を費やしてしまうということそのものが、むしろ皆さんの人生における最大の問題かもしれないという洞察に基づいています。

 心の中身を簡単に変えることができないとしたら、私たちは何をしたらよいのでしょうか。それは、この手足を駆使して心の外にある世界に向けて行動を起こし、積極的に働きかけていくことです。では何のために行動を起こすのか? それは皆さんの人生を価値あるものにしていくために他なりません。変えられない心の中身をただそれだけのものとして受け容れ、皆さんにとっての人生の価値に沿って、身体を使って日々粛々と行動をしていく、このような援助をACTでは行っています。

 最後に、ACTの精神をよく体現している「平静の信念」をご紹介しましょう。

 「変えられないものを平静をもって受け容れなさい、変えられるものを変える勇気を持ちなさい、そして、それらの違いを知るための知恵を培いなさい」

② 対人関係療法(IPT)

 この治療理論も、メインストリーム(主流)である認知行動療法(CBT)に対するオルタナティブ(もう一つの選択肢)と言ってよいでしょう。CBTが心の中に生じる思考を変えていく(=認知変容)という点では心の中身をターゲットとしているのに対し、IPTでは人と人との間(あいだ)に生じる場=対人関係をターゲットとしている、と言うことができます。

 例えば、他人の顔色をうかがい過ぎ、他人の気持ちにはやたらと敏感であるのに、肝心の自分の気持ちを尊重することができず、自分で自分の本当の気持ちに気付くことすら困難であるという方がおられます。このような方は、さしあたっては周囲から良い評価を得られるとしても、やがては疲弊してこのパターンを維持できなくなってしまったり、周囲にいいように利用されてしまうというようなことが多いように見受けられます。

 IPTでは、この他人重視=自分軽視のパターンを是正し、適切なコミュニケーションによって自らを守ることができるよう、皆さんに関わっていきます。

③ 間主観性理論、トラウマ理論に基づく対人把握

 これについて「概説」するというのはやや困難でもあり、私としては示唆的な話にとどめておきたいと思います。

 例えば、境界性パーソナリティ障害を有しているとされる人たちがいます。情緒不安定で衝動的で、時に攻撃的となったり自傷行為を繰り返し、見捨てられることに過度に不安で周囲を振り回します。そして医師は往々にして、このような今現在の顕在的な症状(=横断面での症状)でもって“パーソナリティ”障害と診断を下すわけです。つまり、あなたの“人格”や“性格”にはカクカクシカジカの問題がある、と。

 でも、その人達の過去に何があったのかさかのぼって(=縦断的な視点を持って)探ってみると、次のようなことが分かってきたりします。小さい頃に虐待を受け、何か要求しても与えられるどころか暴力を加えられる。でも生きていくために周囲の大人に要求を繰り返すしかない。ある時、たまりにたまってかんしゃくを起こし大暴れしたところ、一時的ではあれ周囲の大人はその人のことを振り返り、気にかけ、何かを与えてくれるようになった・・・。このような環境でこのような“学習”を繰り返せば、恐らく誰でも、パーソナリティ障害的となってしかるべきでしょう。それはその人の“人格”や“性格”といった個人の属性の問題だけで説明できるようなものでは全くなく、その人の背負った生い立ちが大きく関わっていると考えるべきなのであって、その意味では生まれてから現在まで連綿と続く対人関係(=間主観的な相互作用)に由来する問題と捉えるべきでしょう。

 このような間主観的な感性やトラウマという視点を欠き、ある種の権威である医師が安易に“パーソナリティ”障害と診断することにより、問題を個人の属性に押し込めてしまうことのグロテスクさに、私は警鐘を鳴らしたいと思います。

 冒頭で述べたように、私たちは認知行動療法(CBT)を基本としています。①で述べたACTや②で述べたIPTも、CBTと同様に皆さんが今現在困っている問題に対して具体的で現実的な解決を共に模索していく方法論です。その意味では、これらは全て未来志向のアプローチと言うことができるでしょう。

 それに対して③で述べたことは、今現在の問題を皆さんの生い立ちにまで掘り下げて辿っていく、過去志向のアプローチです。

 この異なる二つの方向性に加えて、適切な薬物療法という別次元のアプローチを組み合わせることで、多次元的な援助が可能であると私は考えています。

費用一覧

カウンセリング(精神療法)40分

  社会人 学生 追加料金
※社会人・学生問わず
カウンセリング
(精神療法)40分
平日一般 4,800円 3,900円 2,000円/15分 一律
平日特別 5,800円 4,900円
土曜特別 6,600円 5,900円
土曜一般 5,600円
4,900円
※カウンセリング費用は保険適用外(自費)となります。費用はすべて税込です。
※一部時間帯に限り学生料金の対象となります。

医院概要

診療所名 医療法人社団
もも こころの診療所
診療科目 精神科・心療内科・カウンセリング
※指定自立支援医療機関
 生活保護法指定医療機関
住所 東京都千代田区神田神保町1-16-3
TSI神保町ビル4F
神保町駅A5出口より徒歩2分。ENEOSさんの向かい、BODY STUDiO ZEROさんの入っているビルの4階です
電話番号 03−5282−2556
※番号非通知の方はお受けできません
診療時間
10:30~12:45
14:00~19:30
[休診日] 木曜日・日曜日・祝日
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